さて、「肛筋」を鍛えるストレッチをたくさん紹介してきましたが、
ご質問もたくさん頂いたように、そもそも「肛筋」とは何なのか?を、今回わかりやすく解説している書籍「やせたいなら肛筋を鍛えなさい」の第一章を全文公開いたします!!
詳しくしっかり説明しているので、2回に渡ってブログで公開しますので、きちんとしくみから理解して頂けたら嬉しいです。
では本日は第一回目【『肛筋』とは? 第1章全文公開 その①】です。
肛筋を鍛えるといいことたくさん
第1章
肛筋って、何?
「肛筋」とは肛門とそれに関連する筋肉をさす造語。
肛筋を鍛えるとやせられます。
まずはダイエットの原点である「肛筋」のしくみを知りましょう。
① 骨盤を支える要が〝肛筋〟です
骨盤は、腰まわりの上下をつなぐ部分で、いくつかの骨がパズルのように組み合わさって形成されています。「骨盤」という骨はなく、上は脊柱(いわゆる背骨)につながり、下は股関節を通して大腿骨(太ももの骨)とつながっていて、内側には腹部の内臓の一部があります。
では、骨盤を触ってみましょう。ウエスト下部に引っかかる、硬い骨があります。ここは骨盤の上部で、図①のように鉢状に開いていて、内臓を守りながら支えています。骨盤の底は、円筒状に開いています。これは、内臓から下に排出されるものの通路になっているからです。
骨盤は、わずかに前傾しているのが理想的な状態です。そのため、骨盤がグラグラと傾かないように、上から下から、たくさんの筋肉が支えています。ひとつひとつが重要な役割をもつ筋肉ですが、特に大きな働きをしているのは2か所だと考えます。
ひとつは、骨盤が前に飛び出ないよう、大腿骨の付け根から、骨盤内を通って脊柱までをつないでいる腸腰筋(大腰筋と腸骨筋の総称)(図②)。骨盤をシートベルトのように押さえています。
そしてもうひとつが、骨盤が下垂しないよう、下からハンモックのように支えている、骨盤底筋群です(図③)。
骨盤底筋群とは、読んで字のごとく「骨盤の底にある筋肉の集まり」。円筒状に開いている骨盤の底を覆うようにつないでいる、いくつかの筋肉があるのです。骨盤の底の前面は恥骨、後面は尾骨です。恥骨は股の上部、尾骨はおしりの割れ目付近にある、硬く小さな骨。どうぞ実際に触ってみて、「こことここの間にあるのか」と実感してください。
実感したら、図④を見てください。骨盤底筋群は外尿道括約筋、女性であれば膣括約筋、そして肛門挙筋(肛門括約筋含む)で形成されています。「括約筋」とは、〝閉じる〟働きをする筋肉のことです。
そして、骨盤底筋群を下(地面側)から見上げた図⑤を見ていただくとわかるように、骨盤底筋群の多くを占めるのが、後ろ(おしり)側なのです。つまり、骨盤を支えている大部分が、この肛門まわりの筋肉群だということです。
このことに気づいてから、私はここを〝肛筋〟と略して注目していきました。
肛筋は自分で鍛えられる
肛門は、直腸が骨盤の底を貫く出口です。便が漏れたり、直腸自体が脱出したりしないように、周囲には肛門括約筋があります。
図⑥のように肛門括約筋の内側の3分の1は内肛門括約筋と呼ばれ、体の自律神経が自動的に収縮させている「不随意筋」です。心臓を動かしている心筋も不随意筋である、と言えばイメージしやすいでしょうか。つまり、自分の意思ではコントロールできません。外側の3分の2は、自分の意思で収縮することができる外肛門括約筋です。
また、その肛門の位置や直腸が下垂しないよう、肛門挙筋という筋肉があります。肛門挙筋はいくつかの筋肉の総称で、恥骨・尾骨・腸骨といった骨盤下部を形成しているそれぞれの骨とつながっています。これらも、自分の意思で収縮することができます。ちなみに外肛門括約筋も、この肛門挙筋に含まれます。
骨盤はもちろん、肛門周辺も、すべて筋肉の力で支えられていることを、おわかりいただけたでしょうか。
内肛門括約筋は不随意筋なので、加齢には抗えず、どうしても締める力が衰えてきます。しかし、外肛門括約筋、肛門挙筋は自分の意思で鍛えることができます。それが、この本で紹介する「肛筋ストレッチ」の目的です。
② 肛筋が衰えると、どうなるの?
すべての筋肉は加齢によって衰える
ご存じのとおり、体のすべての筋肉の力は、年齢とともにどうしても衰えてきます。一般的に30代から始まるようですが、実感を伴うのは、35歳を過ぎたあたりからでしょうか。ブルブル揺れる二の腕や太もも、ぽっこり出てくるおなか、垂れてきたおしり、顔の法令線。40歳を越えるころには、肩全体の丸まりや背中につく贅肉。これらはすべて加齢による筋力の衰えが原因です。また、いくら若くても運動不足であれば、筋力は衰えます。加齢による筋肉の衰えが始まる30代以降は、運動している人とそうでない人の体型の差が明確になってきます。
通常、筋肉は収縮(力を入れて縮める)と弛緩(力を抜いて緩める)を繰り返しながら体を動かしています。この収縮と弛緩の動きが常に行われている筋肉には、ピチピチした弾力性があります。しかし、同じ動作を続けるなどして特定部位に負荷がかかっていたり、反対にほとんど負荷がかけられないと、その部位の筋肉は弾力性を失ってカチカチに硬くなっていきます。硬くなった筋肉が血管を圧迫するため、老廃物が溜まりやすくなり、本来の力が発揮できずに衰えていくのです。
肛筋はかなり衰えやすい筋肉
肛門周辺の筋肉も、例外ではありません。むしろ、見えないぶん、かなり衰えやすいと言っていいと思います。それもそのはず、日常生活で肛門周辺の筋肉を使う動作は、ほとんどありません。意識するのは、排便時ぐらいではないでしょうか。
便秘は腸内環境の悪化が主な原因ですが、便秘になり排便の回数が減ることで、肛門周辺の筋力不足を招くことも想像がつきます。また、時代とともに排便時の姿勢が変化したことも一因ではないかと私は考えます。和式トイレでの排便姿勢はしゃがみ込むので、足裏全体でふんばることができ、肛門挙筋を隅々までしっかり使えます。結果、排便がスムーズになるという実感がある人も多いでしょう。下半身の筋肉の力で排出しているイメージです。一方の洋式トイレは、下半身に力が入りづらいため、自然と腹筋を使って排便しようとしてしまうので、肛筋をうまく使うことができません。便意はあるのに、排便に時間がかかるという人は、肛筋の衰えが一因だと思います。そして、出産も大きく肛筋を衰えさせます。臨月には3 前後になる胎児を骨盤内にある子宮に宿し、膣括約筋を最大級に伸ばして出産するわけですから、骨盤底筋群は伸びきってしまいますよね。一度伸びてしまった筋肉が元通りになるのは、簡単なことではありません。それを裏付けるように、出産を経験した女性が、切れ痔や尿モレ(腹圧性尿失禁)に悩むケースは少なくないのです。
肛筋が衰えると、骨盤が不安定に…
あなたの骨盤を下から頑張って支えてくれている筋肉たちが、力尽きて休んでいる…とイメージしてください。すると、どうなるでしょうか。
まずは骨盤がグラグラしてゆがんできます。そのため内臓が下がって、下腹がぽっこりしてきます。これは個々の体型や生活習慣にもよるものですが、日本人に圧倒的に多いのは、骨盤がゆがんで後傾してしまうパターンです。こうなると腹筋が使いづらくなるので、おなかがたるんできます。背中が丸くなり、背中やわき腹に脂肪がつき始めます。また、おしりや太もも裏側の筋肉も使いづらくなるので、そこをカバーしようとして必要以上にふくらはぎが使われ、太くなってきます(図⑦)。
さらに悪いことには、骨盤が後傾すると、股関節が前にずれて骨盤が開いたままになります。すると大転子(太もも付け根の出っ張った骨:図⑧)が広がり、太ももの外側が太くなり、おしりの形が悪くなってラインが下がってきます。そしてヒザが曲がってくるため、歩き方もかかとから着地することができず、ペンギンのようなペタペタ歩きになっていきます。
また、肛門まわりの血流が滞ってきます。そのため、おしりが冷えます。おしりは脂肪量が多いため、血流不足による冷えの自覚症状が出やすいのです。血流不足が慢性化してくると、痔になりやすくなります。
ということなんです。
肛筋とは自分で鍛えられる筋肉であり、そして衰えるとどうなるか・・・。理解いただけたかと思います。
次回は、「③肛筋はダイエットの要」から始まる、第二回目を全文公開します!
是非お楽しみに!